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CIMX NEWS ・ PRESS RELEASE
 

省エネルギー庁長官貰を獲得!
設備の毎分消費電力の視覚化が仕事と意識を変えた


雑誌  | ポジティブ 2006年6月号 (ブレーン・ダイナミックス発行)
 
■20年間ずっと改善を続けてきた

 大学を出て就職した商社を30歳で辞めて父親が経営する金型工場に入った。ずっと商社マンを続けたかったのだが、当時66歳の父に融資するために銀行が後継者を置くことを融資の条件としたため、母親から説得され、熟考の末、一大決心をして工場に入った。
金型についてはまるで門外漢だった。一から金型を学んで職人技を身につけるには年を取り過ぎている。金型製作には準備に多大な手間と労力がかかる。ITを利用してそれを自動化し、準備の時間を短縮すれば大幅なコストダウンが可能になる。

まずはそれこそが自分の目指すべき道だと心に決め、あらためて夜学に通いコンピュータを勉強しながら、システム化に取 り組んできた。

「20年間、ずっと改善をやってきました」と中島高英社長は言う。決して多弁な人ではない。ポツンポツンと一言ずつ、それでも丁寧に答えてくださる。

 金型の現場を観察しシステムを開発し改善に生かす中で、NC工作機やCAD/CAMなど異なるメーカーの設備の情報を集め、それらを統合管理することのできるネットワークシステム「NCリンクス」をつくった。さらに納期に合わせて作業時間や作業人数など生産計画を組み立てることができる「カサブランカ」というシステムをつくり上げた。

 これらのシステムは自社の金型生産に生かすと同時に製品として販売し、NCリンクスが大手自動車メーカーに採用されたこともあって、クチコミで評判が伝わって、会社は急成長した。現在50人の従業員のうち25人が金型の生産に、25人がシステム開発に従事している。

■ 改善の基本は細かく分けること

  バブルがはじけて以来、あらゆる場面でコストダウンに努めてきた。紙1枚、ボールペン1本の節約をみんなに呼びかける一方で、毎月の電気代をなんとかできないかと中島さんはずっと思いつづけていた。

 工場の電気代は少ない月で80万円、多い月で120万円、平均して100万円前後かかっている○毎月ほぼ100万円というのは5,000万円の設備のリース料に相当する額だ。5,000万円の設備を入れるときには清水の舞台から飛び降りるような決断をしているのに、電気代の100万円にはまるで当たり前のような感覚がある。リース料は5年か7年で終了し、その後は大幅に安くなるが、電気代は操業を続ける限り延々と払い続けなければならないのに・・・・・である。
  もちろん加工に必要な電気は削るわけにいかない。問題は加工していないときに機械を空転させていることのいわゆる待機電力のムダだ。電気のムダづかいをなくすためには必要なときだけスイッチを入れ、必要でないときには切ることである。そのためには作業者にこまめにスイッチを入れたり消したりしてもらうしかない。それをどのように意識づけるか?根拠も示さずに口やかましくスイッチを切れ切れと言い続けるだけではモチベーションを下げてしまうし、緊張感が緩むとすぐに元に戻ってしまう。それが分かっているからつい黙ってしまうのだ。

電気代というのは工場が電力会社から請求される月々のトータルの額しか分からない。それでは改善のすすめようがない。

「改善の基本は細かく分けること、そして誰がいつどれだけ使ったかを見えるようにすることです」

 20年の改善運動の経験から中島さんは確信した。そこから考えついたのが、100台近い工場内のすべての装置に電流と電圧の電力メーターを取り付け、時々刻々変化する消費電力のデータをネットワークを通じて集め、それをパソコン画面で見えるようにするというアイディアだった。
  当初はどこかに適当な装置があるはずで、それを購入して組み合わせればよいと考えていた。
だが、中島さんのイメージに合うものはどしてもなかった。

それなら自分たちでつくるしかない。金型屋として、今までにもいろんなものをつくってきたのだから、つくれないはずはないと思った。電気の専門家、通信の専門家、コンピュータソフトの専門家など5人でプロジェクトチームをつくり、その具体化に取り組んだ。ソフトづくりもハードづくりも試行錯誤の連続だった。

■ オセロチャートによる仕事の視覚化

完成したシステムは「ESPドラゴン」と呼ばれる。配電盤中のブレーカーーつひとつにとりつけたセンサーが各設備の電流と電圧を計測しそれを電力使用量に換算して無線LANを通じてデータをサーバーに送る。パソコンを開くとそのデ一夕をオセロチャートと呼ばれるチャートの形で見ることができる。機械1台ずつの消費電力量を1分ごとに表したものだ。

チャートはエクセルの表でできており、ひとマスひとマスのセルに1分ごとの消費電力量が記録されている。たとえば、1分目は1.Okwh、2分目1.2kwh、3分目0.9kwh……といった具合である。1分あたり0.9kwh以上の場合は「稼動」の状態としてマス目はブルーで表され、0.Okwhのときはスイッチを切った「停止」の状態としてピンク色、0.Okwh以上0.9kwh未満の場合はスイッチが入っていて空運転している「待機」の状態として黄色で表される。表は1分ごとに右のマス目に進み、1時間ごとに次の行に移る。60列24行で1台の機械の1日の稼動状態が表される。

 これを見ると、1日のうちいつからいつまで機械が稼動し、停止し、あるいはいつからいつまで待機の状態にあって電気がムダに使われていたかが一目でわかる。黄色の「待機」状態が1マスか2マス点在しているのは、機械のスイッチを入れたまま段取り替えしている状態を表しているのだろう。これが10分も20分も続いているとすれば、スイッチを入れたまま加工に入らずに、次の機械の状態を見に行ったり、打ち合わせしたり、あるいはトイレに行ったり、タバコを吸いに行ったり
‥・…理由はいろいろだろうが、とにかく持ち場を離れていたに違いない。


■待機電力が1年で半減

  自分が切るべきスイッチを切らないで電気をムダ使いしていたことは作業者には分かっていたはずだ。しかし、外からは見えないと思っていた。だからスイッチを切るのを面倒がって機械を回しっぱなしにしていた。オセロチャートはこの見えないはずの一人ひとりの働き方を客観的に見える形にして表した。このチャートができてから作業者たちはきちんきちんとスイッチを切ることを意識するようになり、また、機械の稼働率を可能な限り100%に近づけてチャート全体をブルーの色で埋め尽くすことを目指すようになった。

 オセロチャートは設備の改善ポイントも明らかにした。なぜこの設備の消費電力がこんなにも多いのかを調べていくと、コンプレッサーの配管の空気漏れなどが明らかになることがあった。加工終了後自動的に電源スイッチが切れない設備は、自動的に切れるようにするための改善を推しすすめた。

 作業者の省エネ意識を高めたもうひとつの工夫は、削減された電力料金を「省エネ配当金」として各作業者に平等に配分したことだ。給与明細書には「省エネ配当金」と明記して金額を表示した。ある社員の家庭では、聞きなれない給与項目に気づいた奥さんに尋ねられ、会社での取り組みを話したことがきっかけで家庭でも省エネに取り組み始めたという。給与明細の封筒の中には各部署の待機電力量の削減割合の一覧表も同封した。待機電力量の削減がすすんでいない部署としては頑張らざるを得なくなった。

 ムダな電力として待機電力は2004年1月時点で電力消費量全体の38.2%を占めていたが、これらの改善により04年4月から05年3月までの1年間の平均は18.7%とほぼ半減した。そして、これらの取り組みは05年度の省エネルギー優秀事例全国大会で発表され、高い評価を得て省エネルギー庁長官賞を獲得した。


■応用範囲は広い

「今回のシステム開発は、作業者の行動を見えるものにしたという意味で応用性の広いベーシックな部分を持っていると思います」と中島さんは言う。個々の設備の一定時間ごとの消費電力を明らかにするというアイディアなら誰もが容易に思いつくものかもしれない。しかし、1分単位にまで細分し、それを連続したチャートの上で視覚化するという発想は長年、現場改善に取り組んだ中島さんならではのものである。

 それを評価する声は多く、既に一部の自動車メーカーやスーパーマーケット、レストランチェーンなどがこのシステムを導入しているほか、省エネルギー庁長官賞を獲得したこともあって、国の内外から問い合わせが相次いでいる。

 このシステムを利用して作業者の行動の研究に生かしたいという国内外の大学の経営工学研究室からも問い合わせがあるという。応用範囲はかなり広いものになりそうだ。

創意社 山口 幸正




 

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