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NAKAJIMA COLUMN
 
社長の一口コラム

桜の木の下で


2006年4月24日
 

  会社の庭の老木の桜も満開であった。毎年春が来るたびに、咲いてくれるかどうかドキドキしている。今年も無事に咲き誇りほっとした。
  しかし、この1月にこの桜を植えた父が、この世を去ってしまった。11年の間、寝たきりになり病院で一人息をひきとった。残念ながら私はアメリカに居て、父の臨終には立ち会えなかった。
  子供のころ、父の庭仕事を嫌々ながら手伝っていると、「高英にもいつか、この喜びがわかる時がくるよ」と言っていた言葉を思い出した。私もその頃の父の年に、いつの間にかなっていた。
  年末に大きく庭の改修を行った時、長年付き合っている庭師の人から「血ですね。以前は関心を持たなかったのに、すっかり変わって木々を愛する人になって」と言われた。
  ”主なしとて思い起こせよ庭の花”ハラハラ散る桜の花びらを見ながら、父を想っていた。
  周りの人たちの協力で、なんとか父の残した金型作りも無事に継承できた。父は、心配で心配でたまらなかった息子もやっと一人前になれたので、ほっとしてあの世に逝ってしまったのかも知れないと想うと、涙が流れて止まらなかった。
  私にとっては、とても長い11年間であった。込み上げる思いで、「88年間ご苦労様でした。感謝でいっぱいです。」と出棺の時に、その一言しかいえなかった。
  この春は、特別な春である。父は去っていってしまったが、私の心の中には父が新しく生き始めている。そんな気がしてならない。
  今、金型以外の新しい事業を立ちげようと挑戦していたら、新しい仲間たちが三々五々集まって来てくれてうれしい。本当に素晴らしい仲間たちだ。年配の人も若い人もいる。会社の内と外にも、お客様の中にも、日本と外国にまで輪が広がっている。以前からの長い仲間と新しい仲間が集まっていると、庭に色とりどりに咲く花のように美しいハーモニーを奏でてくれる。
  金型以外といっても、根っこは金型の現場改善から生まれたものだ。小さな小さな足元の世界をこだわり続けて、深く掘っていったら、万人に共通するものにぶつかっただけだ。培った現場改善力をテコにしていくことが、父への恩返しであり供養であるような気がする。
  ”子供のころの熱意があれば、どんなことでも実現できる”と言ったのは誰だか忘れたが、桜の木の下で改めて父の名に恥じないように生きていく覚悟を固めた。

中島 高英
 

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