この4月1日に、NKSとシムックスを合併させた。NKSを引き継いでちょうど10年目、自分の中でひとつの区切りをつけたかった。私自身も50歳を過ぎて、残されたビジネス人生の最終期間に入った。このままで終わるか、もうひとつ花を咲かせるか迷ったが、新しい挑戦をすることを決断した。
振り返ればこの間、シムックス創業以来、社長業をやって延べ30年間になる。その大半が金型現場から突きつけられる問題の解決に、追われる生活であった。常に問題を発見して、解決策を考え、実行することの繰り返しの日々であった。
問題とは、理想と現実のギャップであり、解決策はそのギャップを埋めていく道筋でもある。あいまいな理想からは、ギャップの量が見えない。たとえ量が見えても、道筋と段取りがしっかりしないと、実現できない。
沢山の失敗の中で、”運のよい成功はあるが、運の悪い失敗はない”、”失敗には必ずどこかに原因がある”ということを学んだ。失敗する度に、自分を責めて責め抜くことで乗り切ってきた。
理想は、自分の頭の中にしかない。私にしか見えない形を表に出し、理解してもらうことは難しい。さらに、理想の実現には、多くの人の協力が不可欠である。自分一人にしか見えないものを、協力してくれる多くの人に分かりやすく伝えていかねばならない。そこが一番難しい。悪戦苦闘の連続である。だがそのお陰もあり、この30年間で経営技能を身につけた。
米国でビジネスをはじめて、そのことがよく分かってきた。経営の知識ならば、MBAで2年間も勉強すれば身につけられるが、その使い方を身につけるのはまた別ものである。知識から技術が生まれるが、技能は経験からしか生みだされない。経験は時間を必要とし、重要なものである。
そういう意味で私の30年間は、優秀なMBA出身の若い人よりは勝っている。町工場で身につけた力は、世界に通用するはずである。経験は国も会社も関係なく、個人の中にあるものだと、私は信じている。
私にしか見えなかったものを世界に通用させたい。道を切り開くとは、何たるものかを示していきたい。ニューヨークで鐘を鳴らす日がくることを楽しみにしていてください。
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