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NAKAJIMA COLUMN
 
社長の一口コラム

種を蒔いただけで実はなるのか


2003年07月24日
 

 私は、最近のニュースに目を伏せ、耳を塞いでいる。悲惨な出来事が多すぎる。荒れ果てた心が日本を覆っていっている。自由はいつの間にか価値の無分別になってしまった。
  私が子供のころ、ご飯を残すと”お百姓さんに謝りなさい”と、よく叱られたものである。損をするということではなくて、一粒の米ができるまでに作った人がどれだけ苦労しているか考えて、感謝せよという教えであった。今ではそんな教えも聞くことがなくなってしまった。
  お金をだせば、なんでも買える時代になり、ものを作る側もコスト至上主義になり、心がどこかにいってしまった。種を蒔けば実は簡単に手に入ると勘違いをしている時代である。型作りも機械とソフトがあれば、アルバイトでもできると言われる時代になってしまった。
  しかし、私はITの先端の仕事をしているが、そんなことは一度も考えたことがない。今、私は、ミクロンからサブミクロンという精度の金型作りの職人技をどういう形で残し、継承していくかという課題に取り組んでいる。
  職人技を4つのテーマ(研磨、ミーリング、EDM、磨き)に分けて、徹底的な作業分析と科学的な分析を通じて、新しい型作りに挑んでいる。今回のワークチームは、40年を越えたベテランと中堅と外の技術者、それに専門家の人たちをも交えたものである。
  このチームの中で日々悪戦苦闘している。折角苦労し、編出した新法でも、現場に持ってでると、木っ端微塵に崩れてしまう。そのたびに、現場の熟練の力を見直し、尊敬することになる。
  日々新しい壁にぶつかり、新しい課題が生まれ、またその課題に挑んでいく。これが事実であり、これが私の現実なのである。工夫して試したいことは山ほどある。それをひとつひとつ実行し、紐といていくしかゴールにたどり着く道はない。ゴールまでにはやるべきことがたくさんある。種を蒔いても、ちゃんと水をやり、日に当てて、肥料をやり、雑草を取り除いて手間をかけてやらないと実はならないのだ。
  3年前に某大学教授に”人手に頼っている型屋はみんな潰れる”と言われたことがあるが、どんなに進んでも人は重要であると信じている。ご飯を食べる時にお百姓さんに感謝をするように、型を使う時に、熟練工に感謝するような時代がくることを望んでいる。

中島高英


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